尾身会長の会見内容まとめ
今回の尾身分科会会長の会見の内容を、自分の思考を整理するためにまとめてみた。
前提条件として、ステージの考え方があるので、その基準等を下記に示す。
1. 分科会が示した基準(pdf形式)(令和2年8月7日の分科会提言による)
概要
今回の提言の主な内容は以下。
- 医療体制が逼迫しており、ステージIIIに該当する都道府県もある。
- 医療体制にさらなる財政的な援助を強く求める。
- 国と、都道府県などの各自治体との連携をさらに強化していただきたい。都道府県は強いリーダーシップを持つこと。そして国はそのリーダーシップを後押しすること。
- 現在ステージIIIに該当しいる地域において対策が行われているが、その対策の結果として感染者数の傾向が判明する12月16日ごろに、感染者数が高止まり(「シナリオ2」)、あるいは拡大した(「シナリオ3」)と判断された場合には、さらなる規制が必要。(シナリオについては後述)
- ステージIII相当の対策が必要な地域におけるGo To Travelなどの事業は、前から提言している通り一時停止すること。
- ステージIII相当の対策が必要な地域では、忘年会等はオンラインで、成人式もオンラインで行うなどの対策が必要。
内容
資料はこちら(pdf形式)を参照されたい。なお下の本文中で引用の表記になっているところは、尾身会長の発言。「" "」で囲まれた箇所は、尾身会長が会見において特に強調したところである。
1. 国内の移動症例における年代別の二次感染数の比較
感染して移動している症例数は圧倒的に若年層に多い。20歳代が一番移動しているが、割合からすれば(二次感染させた人数 / 移動した人数)、40〜50歳代が多い。
2. 分科会の現状の認識
2.1. 医療機関
2.2. 都市部を中心とした保健所
2.3. 多くの人々
行動自粛を求められることに辟易している
2.4. 事業者
対策の早期の緩和を望む声
3. 3つのシナリオ
強い対策を行うこととした「勝負の3週間」*2が開始されている。こうした中でステージIII*3に相当する都道府県においてこの「勝負の3週間」が終了した時期(12月16、17日程度を想定)に、感染数がどのような推移を辿ったのかということから3つのシナリオを想定し、そのシナリオごとに政策の提言を行う。
- 3つのシナリオは、国、地方公共団体がこれから対策を進める上で参考にしていただきたい。
- 地方公共団体においては、今まで以上にリーダーシップを発揮して先手を打っていただきたい。
- 国は、地方公共団体が迅速な意思決定を行えるよう、後押しをしていただきたい。
"特に二番目と三番目については、かなり強い意見が分科会の参加者から出た。"
4. シナリオに関わらず、共通して実施すべき施策
…前略…
4.4. "財政支援"を通した医療機関の支援
4.5. 高齢者施設・医療機関等における積極的な検査によるクラスターの早期封じ込め
4.5.1. 高齢者施設などの事業者・自治体・医療従事者で素早く情報提供し連携すること
ある事業者の例では、陽性者が発生したのちすぐに検査を行い適切な行動をとったことで、二次感染を全く起こさなかった例がある。素早い情報提供と適切な処置が重要である。
4.5.2. 高齢者施設等においても、"一例でも"陽性者が発見された場合には施設内の検査を徹底すること
5. [シナリオ1] 感染減少地域
ステージIII相当の対策が必要とされていた地域で「報告数の減少が見られる地域」 → 油断せずステージII以下の水準まで引き下げを。
- 若年層等に届く効率的な情報発信を行う
- 営業時間短縮要請については、国と各自治体が連携し、継続するか否かについて判断すること
6. [シナリオ2] 感染高止まり地域
ステージIII相当の対策が必要とされていた地域で「報告数が高止まりしている地域」→ 対策のさらなる強化が必要。
かなり強い対策をしているにも関わらず高止まりしているということは、これまでの対策が十分に行われていない可能性が高い。なぜなら、しっかりした対策が行われれば、3週間程度で感染者数は減少する傾向にある。しかしそれでも高止まりしているということは、対策が足りない可能性が非常に高い。
6.1. 延長すべき対策
- 営業時間短縮要請を引き続き推進
- テレワークや休暇の分散取得促進の徹底
- イベント開催条件の厳格化(知事の判断)
- 感染が拡大している地域としていない地域との社会経済圏域を超えた往来の自粛要請(これまでの提言通り、ステージIII相当の対策が必要な地域では、Go To Travel事業等も一時停止)
6.2. 医療機関や保健所の負荷への対応・効率的な感染対策
- …(前略)…
- 医療・介護従事者を支援するための医療機関等に対してさらなる"強力な財政支援"(会長がことさら強調していた。分科会でも強く提言されていたと言及していた。)
- …(後略)…
7. [シナリオ3] 感染拡大継続地域
ステージIII相当の対策が必要とされていた地域で「報告数が継続して拡大している地域」→ 人の動きや接触機会のさらなる低減策を
7.1. さらに強化すべき対策
- 営業時間短縮要請の強化
- テレワーク目標を設定(例えば5割など)
- イベント開催要件の厳格化(目安を国より通知)
- 県境*4を超えた移動の自粛要請(これまでの提言通り、ステージIII相当の対策が必要な地域では、Go To Travel事業等も一時停止)
忘年会・新年会・成人式及び規制についての提言
詳しくはこちら(pdf形式)を参照されたい。以下は会長が強調された箇所を抜き出す。
- 若い人たちを中心に就職の機会が奪われている。重傷者が出るという高齢者だけの問題でない、日本国民全体の問題である。
- 一言で言えば、年末年始を静かに過ごすことが、今年は重要。我慢してこれ以上嫌だと感じているかもしれない。私もそう思っている。でも、それでも、今年は静かに過ごしてほしい。
- ステージIII相当の対策が必要となる地域では、特に大人数の「忘年会・新年会」は見送り、オンライン忘年会・新年会を検討すること。成人式もオンライン開催などを検討していただきたい。
質疑応答(一部)
- ステージIII相当の対策が必要な地域とはどの地域か?北海道、東京都、大阪府か?
→ 分科会が判断することではないが、その3つの都道府県はステージIII相当であると分科会は考えている。あくまで考えているだけであり、実際に判断をするのは各自治体と国が連携して行う。
- 3つのシナリオは誰が判断するのか?
→ ステージの判断主体と同様に、自治体と国が連携して判断をする。
自分の感想
- Go To Travelについては、分科会のレベルでも一律に停止せよとの提言はしていない。ステージIIIに該当するような地域にいては一時停止すべきと提言している。どの都道府県がどのステージに該当しているかは、都道府県と国とが連携して判断すべきであると述べている。この点について、札幌と大阪については、政府と自治体との行動が連携して一時停止をしている。首長と国とのさらなる連携が今後も必要になるだろう。
- 分科会で再三再四述べられている、「感染リスクが高まる『5つの場面』」を避けること、という概念の浸透がやはり課題となっているだろう。この場面を避けることは、どのような状況であっても留意すべきものである。
- 都道府県によっては、自分の都道府県がどのステージにあるのかを必ずしも公表していない。この状況は非常によろしくない。メディア等で現在盛んに述べられているのは、「病床使用率がステージIII(あるいはステージIV)になった」といった情報などであり、分科会はそうした判断を推奨していない*5。その善悪は別にしても、それが必ずしも総合的に判断したステージにはならないことに留意したい。
- 医療・介護従事者への支援は力強く実行していただきたい。大阪府に看護師不足のために自衛隊が導入されたことを考慮し、今後こうした状況を他の自治体で発生することを防ぐためにも、財政を含めた医療・介護従事者への支援が急務であると言えよう。
以上
山手線の新駅の駅名に寄せて
山手線の新駅の名称が『高輪ゲートウェイ』に決定したそうな。
賛否両論あるだろうが私は「げーと、うえい???」と感じた。第一印象で。
でも、別に駅名にカタカナや英語が入ってはいけない法律はないし。もう既に他の路線ではカタカナや英語が混じった駅名あるし。
ではなぜ、私は違和感を感じたのか。文章を長々と書きながら考えてみた。
おそらくまだ、「駅名の地域表現論」に引き摺られているからだ(この論は勝手に自分が決めた。卒論でもこんな感じのことを書いた。)
駅はその地域に向かおうとする人の向先として意識されることから、駅名はその地域を表現するものとなる(たぶん)。品川区に「品川駅」はないが、しかし品川駅周辺がいわゆる"品川"と認識されるのはそのためだろう。
さらに、駅名は路線の"倍率"も関係する。ここで言う"倍率"は、利用者がどの程度の空間の広がりをその路線に求めているのか、と言う意味での言葉としてみよう。
思考実験をしてみよう。新幹線の駅と路面電車の駅とでは、目的としている地域の倍率が異なるために、新幹線の駅で「南青山5丁目」という命名の仕方はありえない(と思う)し、路面電車の駅に「東京」はない(と思う)。
新幹線を利用する人が求める"倍率"は、都市と都市の連絡であり、「5丁目」まで求めてはいない。逆に路面電車利用者は「東京」では対象としている地域がでかすぎる。せめて「東京駅南口」とかだろうか*1。
あとは、鉄道会社がプッシュしたい付近の施設の名称が用いられることもある。「東京スカイツリー駅」とか。
つまり私の考えでは、駅名は
(1)その駅がある地域
(2)主にそこに到着する路線の目的とする"倍率"
(3)駅を設置する鉄道会社がプッシュしたい付近の施設
で大方決定されると思うのよ*2
そこで、「高輪ゲートウェイ」という名前。
山手線を利用する人が品川と田町との間に求める役割、あるいは象徴、あるいは先入観、を、「高輪」でそこが「ゲートウェイ」であろう、とJR東日本の担当者の方は考えたらしい。
…うん??
「高輪」は分かる、あの辺だし。「ゲートウェイ」ってなんで?
どうやら「玄関口」という意味を込めたかったらしい。「江戸の玄関口として」云々という理由は流石に笑えたが、今あの辺りが玄関口になっているのかしら??どこへの玄関口なの???
そしてなぜ英語にしたのかの理由がよくわからない。
それだったら「高輪玄関口」でよくない?もしくは山陰本線の丹波口駅みたいに、「羽田口」とか「相模口」(これは流石にないか)みたいでいいんじゃないかしら?どこかの駅の出口みたいな名前だけど。
つまり、この駅名、「この地域のイメージ」(として鉄道会社が設定したいもの)なわんじゃないかしら。
「ゲートウェイ」という
(1)英語で
(2)玄関口と言う意味の
イメージを、JR東日本は設定したいらしい。
私が違和感を持ったのは、この2つのイメージが全く自分の中で像を結ばなかったからなんじゃないかな。
表現(表示)から表象へ、ということなのかしら。今読んでるベンヤミンの『アレゴリーとバロック悲劇』の概念を借りれば、象徴からアレゴリーへ、みたいなことなのかしら。ベンヤミン先生はアレゴリーに対して少し辛辣なので、ちょっと心配…。
別にJR東日本に「こんな名前つけやがって」的なことは思わない。今後どのようにこのイメージを果たすためにいろんなことをやっていくのか。
もしくはイメージをイメージとしてそのまま残すのか。つくばエクスプレスの「みらい平駅」みたいなものかしら。それはそれで楽しいね。ついに駅名が地域の呪縛から解放されるのだ!!
そして、新しい駅名が今後現れる時に、表象を前提とした命名がされていくのかしら。それもそれで楽しそうだ。
英語のイメージなんだから、駅全体の案内とかの言語をすべて英語にしちゃえばいいんじゃないかな。
ヒクソス拝