山手線の新駅の駅名に寄せて
山手線の新駅の名称が『高輪ゲートウェイ』に決定したそうな。
賛否両論あるだろうが私は「げーと、うえい???」と感じた。第一印象で。
でも、別に駅名にカタカナや英語が入ってはいけない法律はないし。もう既に他の路線ではカタカナや英語が混じった駅名あるし。
ではなぜ、私は違和感を感じたのか。文章を長々と書きながら考えてみた。
おそらくまだ、「駅名の地域表現論」に引き摺られているからだ(この論は勝手に自分が決めた。卒論でもこんな感じのことを書いた。)
駅はその地域に向かおうとする人の向先として意識されることから、駅名はその地域を表現するものとなる(たぶん)。品川区に「品川駅」はないが、しかし品川駅周辺がいわゆる"品川"と認識されるのはそのためだろう。
さらに、駅名は路線の"倍率"も関係する。ここで言う"倍率"は、利用者がどの程度の空間の広がりをその路線に求めているのか、と言う意味での言葉としてみよう。
思考実験をしてみよう。新幹線の駅と路面電車の駅とでは、目的としている地域の倍率が異なるために、新幹線の駅で「南青山5丁目」という命名の仕方はありえない(と思う)し、路面電車の駅に「東京」はない(と思う)。
新幹線を利用する人が求める"倍率"は、都市と都市の連絡であり、「5丁目」まで求めてはいない。逆に路面電車利用者は「東京」では対象としている地域がでかすぎる。せめて「東京駅南口」とかだろうか*1。
あとは、鉄道会社がプッシュしたい付近の施設の名称が用いられることもある。「東京スカイツリー駅」とか。
つまり私の考えでは、駅名は
(1)その駅がある地域
(2)主にそこに到着する路線の目的とする"倍率"
(3)駅を設置する鉄道会社がプッシュしたい付近の施設
で大方決定されると思うのよ*2
そこで、「高輪ゲートウェイ」という名前。
山手線を利用する人が品川と田町との間に求める役割、あるいは象徴、あるいは先入観、を、「高輪」でそこが「ゲートウェイ」であろう、とJR東日本の担当者の方は考えたらしい。
…うん??
「高輪」は分かる、あの辺だし。「ゲートウェイ」ってなんで?
どうやら「玄関口」という意味を込めたかったらしい。「江戸の玄関口として」云々という理由は流石に笑えたが、今あの辺りが玄関口になっているのかしら??どこへの玄関口なの???
そしてなぜ英語にしたのかの理由がよくわからない。
それだったら「高輪玄関口」でよくない?もしくは山陰本線の丹波口駅みたいに、「羽田口」とか「相模口」(これは流石にないか)みたいでいいんじゃないかしら?どこかの駅の出口みたいな名前だけど。
つまり、この駅名、「この地域のイメージ」(として鉄道会社が設定したいもの)なわんじゃないかしら。
「ゲートウェイ」という
(1)英語で
(2)玄関口と言う意味の
イメージを、JR東日本は設定したいらしい。
私が違和感を持ったのは、この2つのイメージが全く自分の中で像を結ばなかったからなんじゃないかな。
表現(表示)から表象へ、ということなのかしら。今読んでるベンヤミンの『アレゴリーとバロック悲劇』の概念を借りれば、象徴からアレゴリーへ、みたいなことなのかしら。ベンヤミン先生はアレゴリーに対して少し辛辣なので、ちょっと心配…。
別にJR東日本に「こんな名前つけやがって」的なことは思わない。今後どのようにこのイメージを果たすためにいろんなことをやっていくのか。
もしくはイメージをイメージとしてそのまま残すのか。つくばエクスプレスの「みらい平駅」みたいなものかしら。それはそれで楽しいね。ついに駅名が地域の呪縛から解放されるのだ!!
そして、新しい駅名が今後現れる時に、表象を前提とした命名がされていくのかしら。それもそれで楽しそうだ。
英語のイメージなんだから、駅全体の案内とかの言語をすべて英語にしちゃえばいいんじゃないかな。
ヒクソス拝